イタリアが激怒した『偽カルボナーラ』論争から学ぶ、本物の味を楽しめるカフェの選び方

カフェのメニューでよく見かけるカルボナーラ。クリーミーで優しい味わいが人気ですが、2024年、欧州議会で販売されたカルボナーラにイタリア政府が激怒し、国際問題に発展した事件をご存知ですか?
イタリアのフランチェスコ・ロロブリジーダ農相が「料理犯罪」とまで呼んだこの騒動は、イタリアの伝統的なカルボナーラがいかに厳格なルールに守られているかを世界に示しました。この論争から、伝統的なイタリアのカルボナーラについて学んでみましょう。
欧州議会を揺るがした「カルボナーラ論争」の真相
2024年11月、ベルギー・ブリュッセルにある欧州議会の売店で販売されていたベルギー製の「カルボナーラソース」が、イタリア政府の激しい抗議を受けて撤去される事態となりました。
何がそれほど問題だったのでしょうか?その答えは、伝統的なカルボナーラのレシピにあります。イタリア料理のバイブルとも呼ばれる料理雑誌「ラ・クチーナ」によれば、伝統的なカルボナーラに必要な材料はわずか4つだけです。
- グアンチャーレ(豚の頬肉の塩漬け)
- 卵黄
- ペコリーノチーズとグラナチーズ
- 黒胡椒
注目すべきは、この中に「生クリーム」が含まれていないこと。さらに、グアンチャーレの代わりにパンチェッタ(豚バラ肉の塩漬け)を使うことも、伝統的なレシピからは外れるとされています。
問題となったベルギー製ソースは、グアンチャーレの代替としてスモークパンチェッタを使用していました。イタリア側から見れば、これはカルボナーラの伝統を守らない製品だったのです。[1]
なぜイタリアはここまで激怒したのか?
この騒動は、単なる味の好みの問題ではありません。イタリアにとって、これは自国の食文化を守る戦いなのです。
イタリアは現在、イタリア料理をユネスコの無形文化遺産に登録しようと取り組んでおり、2024年12月に審査結果が出る見通しです。しかし世界中に「イタリア風」料理が氾濫することで、伝統的なイタリア料理の文化が薄れてしまうことを、ロロブリジーダ農相は危惧しています。[1]
実際、イタリア専業農家連盟(Coldiretti)によると、モッツァレラ、サラミ、モルタデッラ、ペストなどのイタリア製食材は、偽商品が多く出回っているという状況があります。
ロロブリジーダ農相はフェイスブックへの投稿で、「カルボナーラのパンチェッタは論外として、こうした製品は全て、最悪のイタリア風製品の代表格だ。それが欧州議会のスーパーマーケットに陳列されるなど容認できない」と述べました。[1]
過去にも物議を醸した「カルボナーラ論争」
実は、カルボナーラをめぐる論争は今回が初めてではありません。2023年には米食品メーカーのハインツが発売した缶詰の「スパゲッティ・カルボナーラ」が、グアンチャーレの代わりにパンチェッタを使用したことで「キャットフードに等しい」と揶揄され、大きな議論を巻き起こしました。[1]
これらの事例が示すのは、イタリアが伝統的なレシピを厳格に守り、後世に伝えようとしているということです。
伝統的なカルボナーラの特徴
伝統的なカルボナーラの特徴は、そのシンプルさにあります。生クリームを使わず、卵黄とチーズが作り出すソースがパスタに絡みます。
グアンチャーレの脂から溶け出す旨味と、ペコリーノチーズの塩気、卵黄のコク、黒胡椒の刺激。これらがバランスよく調和することで、独特の味わいが生まれます。
伝統的なカルボナーラは、できれば食べる直前にパスタに絡めるとされています。[1]これは、卵黄の半熟状態を保ち、最適な食感と味わいを楽しむための方法です。
グアンチャーレとパンチェッタの違い
グアンチャーレは豚の頬肉を塩漬けにしたもので、パンチェッタ(豚バラ肉の塩漬け)とは異なる食材です。グアンチャーレは脂身が多く、加熱すると独特の甘みと深いコクが溶け出します。
一方、パンチェッタは赤身と脂身のバランスが異なり、味わいもより軽やかです。イタリアでは、この風味の違いが重要視されています。
世界各地で愛されるカルボナーラの多様性
興味深いことに、カルボナーラは世界各地で様々なアレンジがされています。生クリームを加えたクリーミーなバージョンや、様々な食材を組み合わせたアレンジなど、各国の食文化に合わせた形で楽しまれています。
イタリアが守ろうとしているのは、あくまで「伝統的なイタリアのカルボナーラ」のレシピです。各国のアレンジを否定するものではなく、伝統的なレシピと文化を後世に正しく伝えていきたいという思いが背景にあります。
まとめ:食文化の多様性と伝統の尊重
欧州議会での「カルボナーラ論争」は、食文化における伝統の重要性を私たちに教えてくれました。
伝統的なイタリアのカルボナーラは、グアンチャーレ、卵黄、ペコリーノチーズとグラナチーズ、黒胡椒というシンプルな4つの材料で作られます。生クリームを使わないこのレシピには、長い歴史と文化的背景があります。
一方で、世界各地で様々なアレンジが生まれ、それぞれの地域で愛されているのも事実です。大切なのは、伝統的なレシピを知り、その文化的背景を理解すること。そして、様々なバリエーションを楽しみながらも、伝統への敬意を忘れないことではないでしょうか。
次にカフェでカルボナーラを注文するとき、そのお店がどんなスタイルのカルボナーラを提供しているのか、ちょっと気にしてみるのも面白いかもしれません。伝統的なイタリアスタイルか、クリーミーなアレンジか。それぞれの良さを知ることで、カフェでの食事がより豊かな体験になることでしょう。
参考文献
[1] CNN.co.jp「イタリア激怒、欧州議会の売店で販売の『カルボナーラ』に」Yahoo!ニュース、2024年11月19日配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/81d380816c51ab905762f3af21fa10ae5da4e3bd
