【2026年版】福岡・薬院&大名のカフェガイド|ダックワーズを「最中」から思いついた店が、この街にある

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天神から南へ1駅、西へ徒歩数分。福岡で個性の強い路面店が集まっているのは、大型商業施設が並ぶ天神そのものではなく、その隣の薬院と大名です。この2つの街には、地名にも通りの名前にも由来が残っています。
この記事では、街の成り立ちをたどったうえで、そこに根を張った店を紹介します。料金や営業時間は変わるので本文では触れません。各店の店舗ページや公式サイトから最新の情報をご確認ください。
薬院という地名は、薬草園と施薬院から来ている
福岡市地下鉄の薬院駅には、乳鉢と乳棒を組み合わせたシンボルマークがあります。交通局の公式説明はこうです。「古くからこの地に薬草園をつくり施薬院を建てたのが地名の由来であることから、薬を作る際の乳鉢と乳棒を組み合わせ、デザインしました」。施薬院は、薬を与えて治療をほどこす施設のことです。
中央区の広報も同じ由来を伝えていて、そちらは「といわれています」と伝聞の形をとっています。いつ誰が薬草園を開いたかまでは、市はどちらの文でも書いていません。
もうひとつ、地元の人でも意外に思う事実があります。薬院駅の所在地は「薬院」ではありません。交通局が公表している住所は中央区白金一丁目です。店を探すときに住所だけを見ていると、薬院という町名と駅の位置がずれていることに気づきます。
大名には、江戸の町名が通りの名前で残っている
大名は福岡城の城下にあたる一帯です。中央区は2008年に地域の人たちと一緒に大名地区の12本の通りへ名前を付け、その由来を公開しました。紺屋町、雁林町、養巴町、林毛町。いずれも江戸期にこの場所で呼ばれていた町名です。紺屋は染物屋を指す言葉です。「大名おほり通り」の由来は市の説明で「昔、堀であったため」。城の堀の跡が、いま通りの名前になっています。
この街の重心が動いたことを示すのが、旧大名小学校です。市の資料によれば、1873年(明治6年)に赤坂の地で「大明小」として開校し、1894年に現在の位置へ移りました。1929年には鉄筋コンクリート造の校舎が建ちました。児童数がピークを迎えたのは1952年の2,064人。そこから減り続け、都心部の小中学校再編にともなって2014年に141年の歴史を閉じました。
市の文化財調査は、昭和4年の校舎について「文化財的な価値は高く、旧大名小学校校舎の昭和初期のデザインが、落ち着いた大名地区の町の性格を際立たせている」と評価していました。その跡地に複合施設「福岡大名ガーデンシティ」が全面開業したのは2023年6月です。昭和初期の校舎が街の性格を作り、子どもの数が減ったことで役目を終えました。大名という街の来歴が、この一区画に畳まれています。
ダックワーズは、フランスの生地から作り替えられた
薬院のフランス菓子16区は「ダックワーズ発祥の店」と紹介されることがありますが、これは正確ではありません。菓子の名前はフランス南西部の温泉保養地ダクス(Dax)に由来し、生地そのものは以前からフランスにありました。三嶋隆夫シェフの公式の説明を、そのまま引きます。
「ダックワーズは 私がパリ16区の菓子店『ARTHUR』のシェフを務めていた1979年に考案したスペシャルです」「それまでこのアーモンド生地は生菓子として あるいはアントルメの底に敷く使われ方をしていました」。アントルメはホールケーキのことです。つまりこの生地は、それ自体を主役にした焼き菓子としては使われていませんでした。
三嶋シェフが思いついたのは、その生地を主役にすることでした。「これを和菓子の最中に相当するものにできたら 新感覚の焼き菓子ができるのではないか」。フランス菓子の生地を、日本の最中に見立てる。この発想の転換から、外がパリッとして中がふわっとした小判型の焼き菓子が生まれました。名前も工夫しています。本来の発音は「ダッコワーズ」ですが、響きを考えて「ダックワーズ」と表記しました。
1981年、三嶋シェフは帰国の翌年に故郷の福岡でフランス菓子16区を開きます。話には続きがあって、1995年の秋、フランス・アンジェの菓子店「ル・トリアノン」のオーナーシェフ、ミッシェル・ギャロワイエ氏が店を訪ねてきました。用件は「ダックワーズの作り方を教えてほしい」。フランスの生地から日本で作り替えられた菓子を、フランスの職人が習いに来たことになります。
だから「ダックワーズが福岡で生まれた」は言い過ぎで、「いま日本で売られている小判型のダックワーズは、この店で形になった」が正しい言い方です。
薬院で寄れる店
フランス菓子16区
中央区薬院4-20-10。上に書いたダックワーズの店です。三嶋シェフはこの菓子の考案を理由のひとつとして、2007年度の「現代の名工」、2015年秋の黄綬褒章を受けています。菓子店ですが喫茶コーナーを併設していて、店内で食べられる日があります。
abeki(アベキ)
中央区薬院3-7-13。公式が名乗るのは「コーヒー&チーズケーキ」で、菓子はチーズケーキ、チョコレートケーキ、ホワイトチョコチーズケーキの3種だけを挙げています。この店で使う器はオリジナルのデザインで、B.B.B POTTERS などの生活道具店でも扱われています。
店舗ページ:abeki
PRINCE of the FRUIT
中央区薬院4丁目。フルーツパフェの専門店です。パフェを副菜ではなく一皿の主役として組み立てる店なので、食後の甘いものではなく、これを目当てに時間を取って訪ねる形が合います。
店舗ページ:PRINCE of the FRUIT
Mic comercy(ミック コメルシー)
中央区薬院1-14-18。街角の小さな喫茶店で、コーヒーと菓子に加えて少し酒も置いています。バナナタルトとロイヤルミルクティーが名前の挙がる品です。
店舗ページ:ミック コメルシー
. AND READY(ドットアンドレディ)
中央区薬院1-12。2015年の創業で、福岡の朝活スポットとして名前の挙がるカフェです。「ヘルシーはおいしい」を掲げていて、クラブハウスサンドやパワーサラダ、アサイーボウルが看板になっています。
店舗ページ:. AND READY
マスターズカフェ 薬院店
店名に薬院とありますが、住所は中央区渡辺通2-3-3です。入っているビルの名前が「エナフィス薬院」なので、それが店名に付いています。西鉄薬院駅から歩ける距離です。福岡大学構内や小倉にも店を持つチェーンで、公式が挙げる看板はハンドドリップのコーヒーとオムライスです。
店舗ページ:マスターズカフェ薬院店
cafe MARUGO(カフェ マルゴ)
中央区薬院2-10-23。2010年11月に開業した深煎り専門の自家焙煎珈琲店です。ネルドリップで淹れる深煎りが軸で、豆の浅煎りが増えたいまの流れとは逆を向いています。
店舗ページ:カフェ マルゴ 薬院店
カフェ ABBEY 薬院店
中央区薬院2-4-5。公式が名乗るのは「キューバサンドとスイーツのお店」で、昼はカフェ、夜はバーとして開いています。薬院大通駅のすぐそばです。
店舗ページ:カフェ ABBEY 薬院店
大名で寄れる店
珈琲舎のだ シャンボール大名本店
中央区大名2-10-1。1966年に博多の対馬小路で始まったブランドで、当時の店名は「喫茶アイドル」でした。1970年に福岡朝日ビル2階へ出した店から「珈琲舎のだ」を名乗っています。サイフォンで淹れるコーヒーが軸で、店内に直火式の焙煎機を置いているのがこの本店の特徴です。地下鉄空港線の赤坂駅から歩けます。
店舗ページ:珈琲舎のだ シャンボール大名本店
黒猫屋珈琲店
中央区大名1-5-5。2012年4月にこの場所で始まった自家焙煎の店です。豆はすべて自家焙煎で、焼いてから72時間以上寝かせてから出しています。5種類のオリジナルブレンドを揃えていて、飲んだ豆を買って帰れます。
店舗ページ:黒猫屋珈琲店
歩く前に知っておくと迷わないこと
薬院と大名は、どちらも天神のすぐ隣です。薬院は西鉄天神大牟田線で西鉄福岡(天神)の次の駅にあたり、駅番号はT02。地下鉄七隈線を使うなら天神南から2駅です。大名は天神に歩いて入れる距離で、地下鉄空港線の赤坂駅が近くなります。天神のすぐ隣でありながら、路地に入ると暮らしの気配が残っているのがこの街です。
店名に入っている地名は、町名と一致するとは限りません。マスターズカフェ薬院店が渡辺通にあるのがその例です。福岡は「薬院」を冠したビル名が多く、店名がそれを引き継ぐことがあります。住所で場所を確かめてから向かうのが確実です。
福岡へ泊まりで訪ねるなら、じゃらんnetで福岡県の宿を探す(広告)と、天神から歩ける範囲で比べられます。
よくある質問(FAQ)
Q. ダックワーズはどこで生まれたお菓子ですか?
菓子の名前と生地はフランス由来です。名前はフランス南西部の温泉保養地ダクスから来ていて、アーモンドの生地は、公式によればもともと生菓子に使うかホールケーキの底に敷くもので、それ自体を主役にした焼き菓子ではありませんでした。それを単体の小判型の焼き菓子に作り替えたのが、フランス菓子16区の三嶋隆夫シェフです。パリで働いていた1979年に考案し、1981年に福岡で開いた自分の店で売り出しました。
Q. 薬院という地名の由来は何ですか?
薬草園と施薬院があったことに由来すると伝えられています。福岡市地下鉄の薬院駅は、そのことにちなんで乳鉢と乳棒を組み合わせたシンボルマークを使っています。
Q. 薬院と大名はどのくらい離れていますか?
どちらも天神の隣で、薬院は天神の南、大名は西にあたります。西鉄なら西鉄福岡(天神)から薬院までが1駅です。歩いて行き来できる距離ですが、天神をはさむ形になります。
Q. 大名の通りの名前が変わっているのはなぜですか?
江戸期にこの場所で呼ばれていた町名を、2008年に中央区が地域の人たちと通りの名前として付け直したためです。紺屋町、雁林町、養巴町、林毛町などが残り、「大名おほり通り」は昔そこが堀だったことに由来します。
まとめ
薬院の地名は薬草園と施薬院に由来すると伝えられていて、そのことが地下鉄駅のシンボルマークにまで刻まれています。大名では江戸の町名が通りの名前として生き、141年続いた小学校の跡地が2023年に複合施設へ変わりました。そういう街に、フランスの生地を最中に見立てて焼き菓子を作り替えた店や、1966年から続くサイフォン喫茶が並んでいます。天神で買い物をして終わりにせず、1駅ぶんか徒歩数分ぶんだけ足を延ばすと、街の来歴ごと味わえます。
参考サイト
- https://www.16ku.jp/product_category/dacquoise/ | フランス菓子16区 公式サイト(ダックワーズの由来)
- https://www.16ku.jp/shop-info/ | フランス菓子16区 公式サイト(店舗情報)
- https://subway.city.fukuoka.lg.jp/eki/stations/yakuin.php | 福岡市地下鉄 薬院駅(シンボルマークの由来)
- https://www.city.fukuoka.lg.jp/chuoku/kikaku/charm-kankou/burarisanpo/yakuin.html | 福岡市中央区「ぶらり散歩」薬院
- https://www.city.fukuoka.lg.jp/chuoku/kikaku/torikumi/machimagurinaviproject.html | 福岡市中央区「まちまぐりナビプロジェクト」(大名地区の通り名の由来)
- https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/kaihatsu/toshi/documents/daimyosyomachizukurikousou.pdf | 福岡市「旧大名小学校跡地まちづくり構想」
- https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/kaihatsu/toshi/kyudaimyosyogakkoatochi.html | 福岡市「旧大名小学校跡地の活用」
- https://www.ensen24.jp/tenjinomuta-line/yakuin.html | 西日本鉄道 薬院駅
- http://abeki-f.blogspot.com/ | abeki 公式サイト
- https://www.nishitetsu.jp/nishitetsu_news/spot_type/post-6248/ | にしてつニュース(. AND READY)
- https://www.masumasa.jp/mastarscafe/shop_yakuin/ | マスターズカフェ 公式サイト(薬院店)
- https://cafemarugo.com/ | cafe MARUGO 公式サイト
- https://www.instagram.com/abbey_yakuin/ | カフェ ABBEY 薬院店 公式Instagram
- https://www.instagram.com/dksp_design/ | PRINCE of the FRUIT 公式Instagram
- https://kbc.co.jp/wish/article/31943/ | KBC九州朝日放送「Mic comercy」
- https://www.coffee-sya-noda.com/history/ | 珈琲舎のだ 公式サイト(沿革)
- https://www.kuronekoya-coffee.com/about | 黒猫屋珈琲店 公式サイト
