【2026年版】銀座の老舗喫茶完全ガイド9選|1902年の資生堂パーラーから続く、120年の喫茶史を歩く

銀座の喫茶店は、日本人がコーヒーを飲むようになった歴史とほぼ重なります。1902年に資生堂が薬局にソーダファウンテンを置き、1911年にはブラジル移民事業をきっかけに生まれた店がコーヒーを広めました。戦後の焼け野原には、豆を何十年も寝かせるという常識外れの店ができました。それらが今も同じ場所で営業しています。
この記事では、2026年8月時点で営業を確認できた銀座の老舗喫茶9軒を、創業年の古い順に紹介します。並べて読むと、それぞれの店が生まれた時代の空気まで見えてきます。営業時間や価格は変わることがあるので、訪問前に各店の公式情報でご確認ください。
1. 資生堂パーラー 銀座本店 サロン・ド・カフェ(1902年創業)
銀座8丁目、東京銀座資生堂ビルの3階。創業は1902年(明治35年)で、今回紹介する中でもっとも古い店です。始まりは化粧品店ではなく調剤薬局で、創業者の福原有信が1900年のパリ万博視察のあとにアメリカのドラッグストアを模し、薬局にソーダファウンテンを設置したのが起源とされています。
名物はアイスクリームソーダ(1,200〜1,300円)と、2,400円から4,000円のパフェ各種。太宰治や森鴎外が通った店としても知られます。営業は火曜から土曜が11時から21時、日祝は11時から20時、月曜定休(祝日は営業)です。
店舗ページ:資生堂パーラー サロン・ド・カフェ 銀座本店
2. カフェーパウリスタ 銀座本店(1911年創業)
銀座8丁目、新橋駅から徒歩5分ほど。1911年(明治44年)12月12日の創業で、現存する日本最古の喫茶店の一つとして紹介される店です。
この店が生まれた経緯は少し変わっています。創業者の水野龍は1908年に始まった日本からブラジルへの移民事業に関わった人物で、その縁でサンパウロ州政府からコーヒー豆の無償提供を受けました。それを飲ませる場所として開いたのがこの店です。「パウリスタ」はサンパウロっ子という意味です。関東大震災で全壊しましたが、1970年に現在地で再建されました。
芥川龍之介ら文豪が通ったことでも知られ、「銀ブラ」の語源をこの店に求める説もあります。ただし語源には慶應の学生用語だったとする説など複数の説があり、定説と言えるものはありません。人気は無農薬・化学肥料不使用の「森のコーヒー」。1階は月曜から金曜が9時から20時、土曜が9時から19時30分、日祝が11時30分から19時です。
店舗ページ:カフェーパウリスタ 銀座本店
3. 銀座千疋屋 銀座本店フルーツパーラー(1913年パーラー開業)
銀座駅B5出口から徒歩1分。会社としての創業は1894年(明治27年)に「新橋千疋屋」として銀座8丁目で始まり、日本初のフルーツパーラーを開いたのが1913年(大正2年)です。日本橋の千疋屋総本店とは別の法人なので、混同しないよう気をつけてください。
1923年の関東大震災のあとに「銀座千疋屋」へ改名し、同じ年にフルーツポンチを考案。1931年には宮内省御用達となり、1938年からフルーツサンドを出しています。ピーチパフェ3,410円をはじめ、季節の果物を使ったパフェが看板です。営業は日曜から金曜・祝日が11時から18時、土曜が11時から19時。
店舗ページ:銀座千疋屋 銀座本店フルーツパーラー
4. トリコロール本店(1936年創業)
銀座5丁目。1936年(昭和11年)の創業とされ、木村コーヒー店(現在のキーコーヒー)の店主だった柴田文次が、コーヒーを広めたいという思いで開いた店です。創業年は公式サイトでの確認が取れなかったため、複数のメディアで一致している年として紹介します。
赤レンガの壁、回転扉、アンティークの家具。昭和初期の喫茶店の作りがそのまま残っています。モーニングセットは780円からで、厚切りトーストとオリジナルの「アンティークブレンド」が定番。営業は朝8時からで、銀座で朝の時間を過ごすなら有力な選択肢です。2023年6月から店休日が設けられているので、訪問前に確認してください。
店舗ページ:トリコロール本店
5. 銀座ウエスト 銀座本店(1947年創業)
銀座7丁目。1947年(昭和22年)1月4日の創業で、戦後すぐの銀座に「GRILL WEST GINZA」というレストランとして生まれました。その後の経緯が面白い店です。都の条例で75円以上のメニューが禁じられたことをきっかけに製菓部門だけを残し、音楽喫茶へ転換しました。1948年からは「名曲の夕べ」を開いています。
1960年代に銀座の駐車場工事で売上が落ちたことが、今の主力である缶入りクッキーが生まれたきっかけでした。リーフパイやドライケーキで知られる店ですが、本店では喫茶として過ごせます。営業は10時から17時で、日祝も開いています。
店舗ページ:銀座ウエスト 銀座本店
6. カフェ・ド・ランブル(1948年創業)
銀座8丁目、銀座駅A3・A4出口から徒歩1分。1948年(昭和23年)、焼け野原の銀座で関口一郎が開いた店です。ここは「コーヒーだけ」の店で、フードメニューはありません。
この店を有名にしたのはオールドビーンズという考え方でした。関口氏は「コーヒーは40年以上熟成させてこそ真の旨味が出る」として、何十年も寝かせた豆を出しました。新鮮な豆こそ良いとされる世界で、正反対のことをやったわけです。手縫いのネルドリップで落とす「ランブルスタイル」も広く知られています。関口氏は2018年に103歳で亡くなりました。
ブレンドは1,100円、パプアニューギニアのサンドライが2,600円。営業は平日11時から20時(ラストオーダー19時)、日祝は11時から18時、月曜定休です。
7. 喫茶 ブリッヂ(1958年創業)
銀座駅C7出口直結、西銀座デパートの地下1階。1958年(昭和33年)、西銀座デパートの開業と同時に入居した店で、創業以来ここで営業しています。創業年は独自の公式サイトが確認できなかったため、複数のメディアで一致している年として紹介します。
約80席の広い店内で、現在は創業者の孫にあたる3代目が営んでいます。名物はメロンパンケーキ。昭和の商業施設の地下で、当時の喫茶店の空気がそのまま残っている場所は銀座でも数えるほどになりました。営業は11時から20時、無休です。
店舗ページ:喫茶 ブリッヂ
8. 喫茶 you(1970年創業)
東銀座駅から徒歩2分、歌舞伎座のすぐ近く。1970年(昭和45年)創業とされ、こちらも公式サイトが確認できなかったため複数メディアで一致する年として紹介します。2010年7月に現在地へ移りました。
名物は生クリームを使ったふわとろのオムライスで、ドリンクセットが1,500円から1,900円ほど。歌舞伎座が近いことから役者にも愛され、十七代目中村勘三郎が贔屓にしたと複数のメディアが伝えています。行列ができる店なので、時間に余裕を持って向かってください。営業は11時から16時30分、水曜定休です。
店舗ページ:喫茶 you
9. 十一房珈琲店(1978年創業)
銀座一丁目駅の4出口を出てすぐ。1978年(昭和53年)創業とされる自家焙煎の店です。開業当初はジャズのクラリネット奏者シドニー・ベシェにちなんだ「カフェ・べシェ」という名前で、移転を機に印刷会社の名から「十一房」へ改めました。
特徴は焙煎機です。富士珈機の前身が製造したヴィンテージの焙煎機「豚釜」で焼くため、独特の燻したような香りが出ます。真空管アンプでジャズが流れる店内で、コーヒーは999円以下。営業は11時から21時30分で、無休(年末年始を除く)です。夜遅くまで開いているので、食事のあとの一杯にも使えます。
店舗ページ:十一房珈琲店
目的別の選び方
- 朝に使いたい:トリコロール本店(8時開店・モーニング780円〜)
- 夜遅くまでいたい:十一房珈琲店(21時30分まで)、カフェーパウリスタ(平日20時まで)
- コーヒーそのものを味わいたい:カフェ・ド・ランブル(オールドビーンズ)、十一房珈琲店(ヴィンテージ焙煎機)
- 甘いものが目当て:資生堂パーラー(アイスクリームソーダ)、銀座千疋屋(ピーチパフェ3,410円)、銀座ウエスト(リーフパイ)
- 食事もしたい:喫茶 you(オムライス)
- 歴史を感じたい:カフェーパウリスタ(1911年)、資生堂パーラー(1902年)
- 昭和の喫茶店の空気に浸りたい:喫茶 ブリッヂ(西銀座デパート地下)、トリコロール本店
なぜ銀座に喫茶店の歴史が集まっているのか
並べてみると、9軒のうち3軒が明治から大正にかけての創業です。日本人がコーヒーを日常的に飲むようになる出発点が、この街にありました。
きっかけの一つが、1908年に始まったブラジルへの移民事業です。この事業に関わった水野龍がサンパウロ州政府からコーヒー豆の無償提供を受け、1911年にカフェーパウリスタを開きました。同店は銀座から浅草、丸ノ内へと直営店を広げ、それが喫茶店の全盛期につながったとされています。当時としては珍しかったブラジルコーヒーを飲みに銀座へ出かけること自体が、ひとつの流行だったわけです。
そして戦後、焼け野原になった銀座に、コーヒーだけを出す店(カフェ・ド・ランブル)や、条例をきっかけに音楽喫茶へ姿を変えた店(銀座ウエスト)が生まれました。今ある店の一軒一軒に、その時代の事情が刻まれています。
訪れる前に知っておきたいこと
- 営業時間が短い店がある:喫茶 youは16時30分まで、銀座ウエスト本店は17時までです。午後遅くに向かうと閉まっていることがあります。
- 定休日が分かれている:資生堂パーラーは月曜、カフェ・ド・ランブルは月曜、喫茶 youは水曜。まとめて回ろうとすると、どこかが必ず休みに当たります。
- 行列ができる店がある:喫茶 youのオムライスは待ち時間が長くなりがちです。開店直後を狙うのが確実です。
- 価格帯は幅が広い:コーヒー1杯1,100円のカフェ・ド・ランブルから、パフェ3,410円の銀座千疋屋まで。老舗の相場は一般的なチェーンより高めだと思っておいてください。
- 創業年には諸説ある店もある:公式サイトに沿革を掲載していない店では、メディアによって創業年の記載が分かれることがあります。この記事では公式で確認できた店とそうでない店を書き分けています。
よくある質問(FAQ)
Q. 銀座でいちばん古い喫茶店はどこですか?
今回紹介した中では、1902年(明治35年)創業の資生堂パーラーがもっとも古く、次いで1911年(明治44年)のカフェーパウリスタです。パウリスタは現存する日本最古の喫茶店の一つとして紹介されることが多い店です。
Q. 銀ブラの語源は本当にカフェーパウリスタですか?
「銀座でブラジルコーヒーを飲むこと」を指したという説はよく紹介されますが、慶應の学生用語だったとする説など複数の説があり、どれが正しいと断定できる状態ではありません。2018年にはこの語源をめぐって識者の間で議論も起きています。
Q. 朝から開いている店はありますか?
トリコロール本店が8時、カフェーパウリスタが平日9時から開いています。トリコロールはモーニングセットが780円からで、銀座で朝を過ごすならまずここが候補になります。
Q. 予算はどのくらい見ておけばいいですか?
コーヒー1杯で1,000円前後、パフェやパンケーキを頼むと2,000円から3,500円ほどです。カフェ・ド・ランブルのブレンドが1,100円、銀座千疋屋のピーチパフェが3,410円、資生堂パーラーのパフェが2,400円からと考えておくと目安になります。
Q. 一日で何軒くらい回れますか?
紹介した9軒は銀座1丁目から8丁目に収まっていて、端から端まで歩いても20分ほどです。ただし定休日が分かれているので、3軒程度に絞って営業日を先に確認しておくのが現実的です。
まとめ
銀座の老舗喫茶は、創業年の順に並べるとそのまま日本の喫茶史になります。1902年の資生堂パーラーが薬局のソーダファウンテンから始まり、1911年のカフェーパウリスタがブラジル移民の縁でコーヒーを広め、戦後には豆を何十年も寝かせるカフェ・ド・ランブルが現れました。
どこか1軒だけ選ぶなら、コーヒーで選ぶならカフェ・ド・ランブル、歴史で選ぶならカフェーパウリスタ、朝に行くならトリコロール本店です。行く前に定休日だけは確認してください。月曜と水曜に休む店が分かれているので、何も調べずに向かうと、たいていどこかが閉まっています。
参考サイト
- https://parlour.shiseido.co.jp/history/ | 資生堂パーラー 沿革
- https://www.paulista.co.jp/brands/ | カフェーパウリスタ 公式サイト
- https://ginza-sembikiya.jp/f/history | 銀座千疋屋 沿革
- https://www.ginza-west.com/ | 銀座ウエスト 公式サイト
- https://cafedelambre.com/ | カフェ・ド・ランブル 公式サイト
- http://www.tricolore.co.jp/ginza_trico/ | トリコロール本店
