紅葉はなぜ赤くなる?|黄色は「引き算」、赤は糖から新しく作る「足し算」

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イチョウは黄色くなり、カエデは赤くなる。同じ秋の同じ気温のなかで、なぜ色が分かれるのか。
答えは、黄色と赤で起きていることがまったく違うからです。黄色は隠れていた色が現れる引き算、赤は新しく色素を作る足し算。しかも赤い色素を作る目的は、人に見せるためではありませんでした。
黄色は、緑が抜けて出てくる
葉が緑色なのは、光合成をするクロロフィルという色素があるからです。秋になって葉の役目が終わりに近づくと、このクロロフィルが分解されて緑が消えていきます。
そのとき、もともと葉に少しだけ含まれていたカロチノイドという黄色い色素が残ります。新しく作られたのではなく、緑に隠れていたものが見えるようになるだけです。カラマツ、ミズナラ、ブナなどがこの黄葉のタイプにあたります。
絵の具を足したのではなく、上に塗ってあった緑をはがした状態。これが黄色の正体です。
赤は、葉が最後に作る色
赤はまったく別の話です。長野県林業総合センターの資料は、こう説明しています。
緑の葉にはほとんど含まれていなかった紅色の色素(アントシアン)が新たに合成され、葉に蓄積される
つまり赤い葉は、散る直前にわざわざ新しい色素を作っていることになります。役目を終えようとしている葉が、なぜそんな手間をかけるのか。
森林総合研究所が2024年に発表した研究が、その理由を示しています。舞台はハウチワカエデというカエデの仲間です。
秋になると、葉は自分のなかの窒素を枝へ回収しはじめます。この時期にはデンプンを作る働きが止まり、葉に残っていたデンプンが糖に分解されていきます。ところが糖の濃度が上がりすぎると、葉の老化が進んでしまう。そこで葉は、余った糖を材料にしてアントシアニンを合成し、糖の濃度が上がるのを抑えているというのです。
赤くなるのは、早く散ってしまうのを防ぎ、活性酸素による傷みを避けるための処理でした。紅葉は葉の終わりの飾りではなく、最後まで働くための仕組みだということになります。
日当たりのよい葉ほど赤くなる
アントシアニンの材料が光合成で作られた糖なら、よく日の当たる葉ほど材料が豊富だということになります。実際この働きは、木の外側、日当たりのよい枝先の葉で強く出ます。
同じ木でも外側が赤く、内側が黄色や緑のまま残っていることがあるのは、これで説明がつきます。長野県の資料も「秋に昼夜の温度差が激しく、よく日が当たることで、色づきが良くなります」と書いています。
色づいてから、葉が落ちる準備が始まる
葉が枝から離れるときには、葉柄と枝のあいだに「離層」という細胞の薄い層ができます。ここが壊れることで葉は自然に落ちます。
順番を勘違いしやすいのはここです。古い解説では「離層ができて栄養が行き来できなくなるから紅葉する」と説明されることがありますが、森林総合研究所が2026年に発表した観察はその逆でした。札幌のハウチワカエデを8月末から11月初めまで追ったところ、アントシアニンの合成と糖の増加は10月上旬より前に始まり、離層の細胞が崩れはじめたのはそのあとだったのです。
さらに、葉のなかの窒素は離層ができたあとも減り続けていました。落ちる直前まで管がつながっていて、葉は最後まで栄養を木へ送り返していたことになります。
その年の色づきは、春に決まっている部分がある
国立環境研究所などが2025年に発表した研究には、意外な結果があります。大雪山や北アルプスなど3か所に定点カメラを置いて何年も撮り続けたところ、雪解けが遅く、葉が開く日が遅かった年ほど、秋の色づきが強かったのです。
理由は葉の寿命だと考えられています。春に早く開いた葉は、秋の時点ですでに老化が進んでいて、色素を作ったり壊したりする働きがうまく回らない。秋の鮮やかさは、その年の春からの積み重ねということになります。
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よくある質問(FAQ)
Q. 紅葉と黄葉では何が違うのですか?
色のできかたが違います。黄色はクロロフィルが分解されて、もともとあったカロチノイドが見えるようになったもの。赤はアントシアニンという色素が秋になって新しく合成されたものです。
Q. なぜ葉は赤い色素をわざわざ作るのですか?
森林総合研究所の研究によると、秋に増える糖を材料にアントシアニンを作ることで、糖の濃度が上がりすぎるのを抑えているためと考えられています。早期の落葉や活性酸素による傷みを避ける働きです。
Q. 同じ木なのに外側だけ赤いのはなぜですか?
アントシアニンの材料は光合成でできた糖なので、日当たりのよい枝先の葉ほどよく作られます。よく日が当たり、昼夜の温度差があると色づきがよくなります。
Q. 離層ができるから紅葉するのですか?
順番は逆でした。森林総合研究所が2026年に発表した観察では、アントシアニンの合成が先に始まり、離層の細胞が崩れはじめたのはそのあとでした。
Q. 年によって紅葉のきれいさが違うのはなぜですか?
要因はいくつかありますが、国立環境研究所などの研究では、春に葉が開いた日が遅い年ほど秋の色づきが強いという関係が見つかっています。
まとめ
イチョウの黄色は、緑のクロロフィルが分解されて、もともとあった黄色の色素が現れたもの。カエデの赤は、秋になって新しく作られたアントシアニンです。しかもその赤は、余った糖を処理して葉が早く散るのを防ぐための働きでした。色づきが先で、落ちる準備はあと。日当たりのよい枝先ほど赤くなり、鮮やかさはその年の春からの積み重ねで決まる。今年の紅葉を見上げるとき、それぞれの葉がまだ働いている最中だと思うと、少し違って見えるかもしれません。
参考サイト
- https://www.pref.nagano.lg.jp/ringyosogo/joho/minigijutsu/documents/mini04.pdf | 長野県林業総合センター「紅葉のしくみ」
- https://www.ffpri.go.jp/research/saizensen/2024/20240729.html | 森林総合研究所「紅葉のアントシアニン合成と糖の関係」(2024年)
- https://www.ffpri.go.jp/research/saizensen/2026/20260413.html | 森林総合研究所「離層の発達と紅葉・養分回収の順序」(2026年)
- https://www.nies.go.jp/whatsnew/2025/20250908/20250908.html | 国立環境研究所・森林総合研究所・信州大学「展葉時期と秋の色づきの関係」(2025年)
- https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/phn_014.html | 気象庁「かえで紅葉日」(生物季節観測)
