「喫茶店」と「カフェ」の違いは、2021年になくなった|法律が分けていたのは酒を出せるかどうかだった

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看板に「喫茶」と書く店と、「カフェ」と書く店。呼び方の好みの違いに見えますが、2021年5月までは法律の上でも別の区分でした。役所に出す営業許可の種類から違ったのです。
分かれ目は、意外なところにありました。豆の挽き方でも、内装でも、コーヒーの値段でもありません。お酒を出せるかどうかです。
かつて「喫茶店営業」という許可があった
飲食店を開くには、食品衛生法にもとづく営業許可が要ります。2021年5月まで、その業種は34に分かれていて、そのうちの2番目が「喫茶店営業」でした。
改正前の食品衛生法施行令は、その第2号にあたる喫茶店営業を、こう定義していました。
喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業をいう。
「酒類以外の」という一句が入っています。喫茶店営業の許可では、お酒を出せませんでした。
条文の中で「カフェー」は喫茶店の側にいなかった
おもしろいのは、その1つ前です。改正前の第1号、飲食店営業の定義を見てみます。
一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフェー、バー、キャバレーその他食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業をいい、喫茶店営業(略)を除く。
「カフェー」が、バーやキャバレーと並んで飲食店営業の側に例示されています。法律の文言のうえでは、カフェは喫茶店ではなかったわけです。厚生労働省の解説資料も、この点を「旧第1号の規定で、飲食店営業の例示として規定されていた業態(カフェー等)」と説明しています。
バー・キャバレーの隣に置かれていることからも分かるように、この条文が書かれた時代の「カフェー」は、いま思い浮かべるカフェとは別の業態を指していました。お酒を出さない喫茶店を指す「純喫茶」という呼び名も、この線引きと重なります。ただし純喫茶は店が自ら名乗る俗称で、法律上の区分ではありません。
2021年6月1日、区分がなくなった
2018年に成立した「食品衛生法等の一部を改正する法律」(平成30年法律第46号)が、2021年6月1日に本格施行されました。このとき営業許可の業種が34から32に再編され、喫茶店営業は飲食店営業に統合されました。
厚生労働省の説明資料も「旧第2号の喫茶店営業は飲食店営業の一形態として統合される」と書いています。いま新しく店を開くとき、「喫茶店として申請する」という選択肢はありません。全部まとめて飲食店営業です。
すでに喫茶店営業の許可を持っていた店は、その許可の有効期間が切れるまではそのまま営業できます。更新のタイミングで、飲食店営業に切り替わる仕組みです。だから看板に「喫茶」と書いてある店が急に何かを変えたわけではありません。
いまも「喫茶店」が残っている場所
法律の区分は消えましたが、統計の世界には残っています。総務省の日本標準産業分類です。
大分類M「宿泊業,飲食サービス業」の下、中分類76「飲食店」の中に、小分類767「喫茶店」があります。定義はこうです。
主としてコーヒー,紅茶,清涼飲料などの飲料や簡易な食事などをその場所で飲食させる事業所をいう。
最新は第14回改定(2023年7月告示、2024年4月施行)ですが、この定義文は前の改定から変わっていません。喫茶店が何軒あるかという統計は、いまもこの分類で数えられています。
そしてこの分類にも「カフェ」という項目はありません。カフェを名乗る店は、業態に応じて喫茶店か食堂・レストランのどちらかに数えられています。
結局、何が違うのか
- 食品衛生法上 2021年6月1日以降、区別はありません。どちらも飲食店営業です
- 統計上 「喫茶店」は分類として存在し、「カフェ」はありません
- 店の側 名乗り方の問題です。喫茶店を名乗る店がお酒を出しても、いまは何の問題もありません
逆に言えば、2021年5月以前に「喫茶」を名乗っていた店は、少なくともその時点ではお酒を出していなかった可能性が高い、ということになります。古い看板は、当時の許可の形を映しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 喫茶店とカフェに法律上の違いはありますか?
2021年6月1日以降はありません。それ以前は「喫茶店営業」と「飲食店営業」という別々の営業許可があり、喫茶店営業では酒類を出せませんでした。
Q. なぜ区分がなくなったのですか?
食品衛生法の改正で営業許可の業種が34から32に再編され、実態に合わせて整理されたためです。喫茶店営業は飲食店営業の一形態として統合されました。
Q. 「純喫茶」とは何ですか?
お酒を出さない喫茶店を指す呼び名です。法律上の区分ではなく、店が自ら名乗る俗称です。
Q. 喫茶店の許可を持っていた店はどうなりましたか?
許可の有効期間が満了するまではそのまま有効で、更新の際に飲食店営業へ切り替わります。新たに取り直す手続きは必要ありません。
Q. 統計で「カフェ」の数は分かりますか?
日本標準産業分類に「カフェ」という項目がないため、カフェだけを数えた公的統計はありません。多くは小分類767「喫茶店」に含まれています。
区分がなくなったいま、店選びの基準は業態ではなく過ごし方です。ゆっくり話せる店を予約したいときは、一休.comレストランがあります。
まとめ
2021年5月まで、喫茶店とカフェは営業許可の種類から違いました。喫茶店営業の条文には「酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業」とあり、お酒は出せません。一方の飲食店営業の条文には、レストランやバーと並んで「カフェー」が例示されています。酒を出すかどうかが境目だったわけです。2021年6月1日の法改正で業種が34から32に再編され、喫茶店営業は飲食店営業に統合されました。いま残っているのは統計上の分類だけです。「喫茶」と書かれた古い看板は、その区分があった時代の名残ということになります。
参考サイト
- https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000562273.pdf | 厚生労働省「食品衛生法施行令の一部を改正する政令(令和元年政令第123号)新旧対照条文」(改正前の第35条第1号・第2号)
- https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000787424.pdf | 厚生労働省「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う営業等の取扱いについて」(薬生食監発0601第3号、令和3年6月1日)
- https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000706467.pdf | 厚生労働省「営業許可業種の解説」(34業種から32業種への再編/喫茶店営業の統合)
- https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/10/04/7671 | 総務省「日本標準産業分類」細分類7671 喫茶店(令和5年7月改定)
- https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukatsu01_02000212.html | 総務省「日本標準産業分類の改定(第14回改定)」
