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カフェの氷はなぜ透明なのか|家の冷凍庫のほうがずっと冷たいのに、白い氷しかできない理由

公開: 2026/09/16 更新: 2026/09/15
カフェの氷はなぜ透明なのか|家の冷凍庫のほうがずっと冷たいのに、白い氷しかできない理由

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カフェで出てくるアイスコーヒーの氷は、角まで透き通っています。家の製氷皿で作った氷は、真ん中のあたりが白く曇っています。同じ水道水なのに、どうしてこうも違うのでしょうか。

答えを先に書きます。白いのは水に溶けていた空気です。そして透明にするコツは、冷やす強さではなく凍らせる遅さにあります。家庭用の冷凍庫は氷屋さんの設備よりずっと冷たいのに、白い氷しかできません。

白く見えているのは、細かい空気の泡

水には、目に見えないだけでたくさんの空気が溶けています。魚が水中で呼吸できるのはそのためです。

ところが氷の結晶は、この空気を中に抱えたまま固まることができません。水が氷に変わるにつれて、溶けきれなくなった空気が泡になって出てきます。逃げ場がないまま閉じ込められると、無数の細かい泡が光を散らします。中谷宇吉郎 雪の科学館は、氷が白く濁る理由をこう説明しています。「通常、水には空気が大量に溶け込んでいますので、それを凍らせると空気は気泡として氷の中に取り込まれてしまいます」

白いのは汚れではありません。すりガラスが向こうを透かさないのと同じで、細かい境目にぶつかるたび光が向きを変えてしまうだけです。

なぜ、真ん中だけが白いのか

製氷皿の氷を光に透かしてみてください。外側は澄んでいて、白いのは中心のあたりに固まっているはずです。これは凍る順番がそのまま形に残ったものです。

氷は冷たい面から先にできます。製氷皿なら、まず皿に接した外側と水面が凍り、内側へ向かって進みます。このとき、凍っていく境目は空気や不純物を前へ前へと押し出していきます。前川製作所の技術研究所は、この現象を染料の例で説明しています。ゆっくりした結晶の成長では、ほかの物質は氷の境目に押し出されて結晶の内部に入り込めない。ところが凍る速さが速いと、境目に閉じ込めたまま成長してしまう、というものです。

押し出された空気は、行き場を失って最後に凍る場所に集まります。それが中心です。家の冷凍庫は一気に凍らせるので、押し出しが間に合わなかったぶんが全体にも残ります。

氷屋さんは、まる2日以上かけている

飲食店に氷を納めている「純氷」の作り方を、全国氷雪販売業生活衛生同業組合連合会(全氷連)が公開しています。手順は3つに分かれます。

1. 水をろ過する 活性炭でカルキと臭いを取り、フィルターで異物を除き、逆浸透膜(RO)でさらに不純物を落とします。

2. 凍らせる 塩化カルシウムのプール(ブライン)を約−10℃に冷やし、そこにステンレスのアイス缶を沈めます。缶の中には圧縮空気をエアパイプで送り込んで、水をかき混ぜ続けます。かき混ぜることで不純物が放出されます。

3. 中心の水を捨てて、入れ替える ここが肝心なところです。24時間から30時間たつと、缶の中心にはまだ凍っていない水が残っています。押し出された空気と不純物が濃く溶け込んだ水です。これを吸い取って捨て、新しい水を注ぎ足します。この吸い取りを数回くり返します。回数が多いほど氷は澄みます。

こうして48時間以上、工場によっては72時間近くかけて、約135kgの氷柱ができあがります。最後は15℃ほどのプールに沈めて缶の周りだけを溶かし、氷を取り出します。氷販売の中央冷凍産業によると、氷が育つ速さは1時間に2mmから3mmほどです。

家庭の製氷皿が数時間で凍ることを思えば、桁が違います。

冷たいほうが、白い氷になる

ここで数字を並べると、直感と逆になります。中央冷凍産業が挙げている、それぞれが氷を作るときの温度です。

作り手製氷する温度凍るまで
氷屋さんのブライン約−10℃48時間以上
家庭の冷蔵庫約−20℃数時間

家庭の冷蔵庫のほうが、10℃ほど低い温度で凍らせています。それでも白い氷しかできません。透明さを決めているのは冷たさではなく、押し出された空気が逃げるひまがあるかどうかだからです。強く冷やすほど凍る面が速く進み、空気は逃げそこねて閉じ込められます。

同社はこの理屈をはっきり書いています。ブラインをこれ以上冷やすと「水中の不純物(塩素、ミネラル成分、空気etc)を排出するために必要な時間より早く周囲の水が凍ってしまい、結局は不純物を氷の中に閉じ込めてしまう」。−10℃は、速さと透明さの折り合いをつけた温度だというわけです。

ついでに言うと、厨房に置く自動製氷機は−25℃とさらに低く、同社は「不純物の排出よりも生産性を重視しています」と書いています。カフェの氷が角まで透き通っているとしたら、それは店内で作ったものではなく、氷屋さんから届いた純氷のほうです。

家でどこまで近づけるか

雪の科学館が挙げている工夫は、どれも「遅くする」か「空気を減らす」かのどちらかです。

  • 一度沸騰させた水を使う 沸かすと溶けていた空気が抜けます。泡になるもとを減らしておく考え方です
  • 製氷皿を包む タオルで巻いたり、熱を伝えにくいものを下に敷いたりして、凍る速さを落とします
  • 一定の方向から凍らせる 容器全体を均等に冷やすのではなく、一方向から凍らせると、発生した気泡が逃げやすくなります。氷屋さんが工場でやっているのも、これを時間をかけて徹底したものです
  • 水をかき混ぜる 氷屋さんがエアパイプでやっていることの、簡易版です

雪の科学館は、そのかわり「氷を作るのにかかる時間は大幅に延びてしまいます」とも書いています。うまくいく方法ほど、待たされます。

よくある質問(FAQ)

Q. 氷が白く濁るのはなぜですか?

水に溶けていた空気が、凍るときに細かい泡となって氷の中に閉じ込められるからです。その泡の境目で光が散乱するため、白く見えます。汚れではありません。

Q. どうして真ん中だけ白いのですか?

氷は冷たい面から順にできていき、凍っていく境目が空気や不純物を前へ押し出します。押し出されたものは最後に凍る場所へ集まるので、外側から凍る製氷皿では中心に寄ります。

Q. 冷凍庫を強めに設定すれば透明になりますか?

逆です。強く冷やすほど凍る速さが上がり、空気が逃げる前に閉じ込められます。氷屋さんのブラインは約−10℃で、家庭の冷蔵庫の約−20℃より高い温度です。

Q. 家で透明な氷は作れますか?

近づけることはできます。一度沸かした水を使う、製氷皿をタオルで包む、下に熱を伝えにくいものを敷く、一方向から凍らせる、水をかき混ぜる、といった方法が挙げられています。ただしゆっくり凍らせる方法では、氷ができるまでの時間が大幅に延びます。

Q. 純氷はふつうの氷と何が違うのですか?

活性炭と逆浸透膜で不純物を落とした水を、約−10℃で48時間以上かけて凍らせたものです。途中で中心の水を数回入れ替えて、空気と不純物を抜いていきます。1本で約135kgになります。

Q. 透明な氷は溶けにくいのですか?

氷の販売店はそう説明しています。全氷連は純氷を「残留物などを含まず、濃密で固い、溶けにくい透明な氷」と書いています。ただし、透明さそのものが溶ける速さをどれだけ変えるかを数字で示した公的なデータは見つけられませんでした。確かなのは、不純物をできるかぎり抜いた水から、時間をかけて作られているということです。

家で一方向から凍らせるのを試すなら、透明な氷用の製氷器はYahoo!ショッピングで探せます

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まとめ

氷が白く見えるのは、水に溶けていた空気が細かい泡になって閉じ込められているからです。凍っていく境目は空気を前へ押し出すので、押し出されたものは最後に凍る場所、つまり製氷皿なら中心に集まります。氷屋さんはここを逆手に取っていて、約−10℃のブラインで48時間以上かけて凍らせ、途中で中心に残った水を数回吸い取って入れ替えます。家庭の冷蔵庫は約−20℃と、氷屋さんのブラインより10℃ほど低いのに白い氷しかできません。効いているのは冷たさではなく、空気が逃げるための時間のほうだからです。家でも、沸かした水を使う、製氷皿を包んでゆっくり凍らせる、一方向から凍らせるといった方法で近づけます。そのぶん、待ち時間は長くなります。

参考サイト

  • https://yukinokagakukan.kagashi-ss.com/oshiete/%E9%80%8F%E6%98%8E%E3%81%AA%E6%B0%B7%E3%81%AE%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%9F/ | 中谷宇吉郎 雪の科学館「透明な氷のつくりかた」(白濁の原因・沸騰・断熱・一方向凍結・時間が延びること)
  • https://icenet.or.jp/manufacturing/ | 全国氷雪販売業生活衛生同業組合連合会「氷屋純氷ができるまで」(ろ過・ブライン約−10℃・エアパイプ攪拌・24〜30時間での水の入れ替え・48時間以上/72時間近く・約135kg・15℃での脱氷)
  • https://rdc.mayekawa.co.jp/column/02-17.shtml | 前川製作所 技術研究所「氷の生成過程に起こる諸現象の基礎とその利用」(凍結速度と結晶界面での排除)
  • https://chu-rei.co.jp/category-koriyajunpyou/pure-ice-process2/ | 中央冷凍産業「純氷の作り方2.製氷」(ブライン−10℃・1時間あたり2〜3mm・135kg・家庭の冷蔵庫 約−20℃/自動製氷機 −25℃・冷却を速めると不純物を閉じ込めること)


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