コーヒーの味は水で変わる|日本の水道水は硬度48.9mg/L、ドイツの4分の1ほどしかない

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旅先のホテルで、家と同じドリップバッグを淹れたら味が違った。引っ越したら、いつもの豆が急に薄く感じるようになった。そんな経験はないでしょうか。
豆も器具も同じなら、変わっているのは水です。そして日本の水道水の硬度は、全国665地点を1つの研究室で測った調査で平均48.9mg/L。ドイツやフランスの4分の1ほどしかありません。
硬度とは、カルシウムとマグネシウムの量
硬度は、水に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を表した数値です。東京都水道局の説明では、硬度の低い水を軟水、高い水を硬水と呼びます。
日本の法令では、硬度は300mg/L以下と基準が決められています。さらに、水質管理上の目標値としておいしさの面から10〜100mg/Lという範囲も設定されています。味に関わる数値として、明確に扱われているということです。
665地点を測ったら、平均48.9mg/Lだった
2021年に発表された調査では、日本全国665地点から水道水を集め、1つの研究室でまとめて分析しています。結果は平均48.9mg/L、中央値46.0mg/Lでした。
同じ方法で採った海外の水と並べると、位置がはっきりします。
| 国・地域 | 硬度の平均 |
|---|---|
| ザンビア | 362mg/L |
| ドイツ | 187mg/L |
| フランス | 178mg/L |
| タイ | 164mg/L |
| 中国 | 114mg/L |
| 日本 | 48.9mg/L |
| ニュージーランド | 37.8mg/L |
ドイツ187mg/Lに対して日本48.9mg/L。同じ「水道水」でも、含まれるミネラルの量が4分の1しかありません。ヨーロッパで買ったコーヒー豆を日本で淹れたときに印象が変わるのは、豆が移動したせいだけではないわけです。
なお海外のデータは国ごとに数地点から十数地点で、その国全体を代表する数字ではありません。あくまで同じ方法で測った比較として見てください。
日本が軟水なのは、水が地中にとどまる時間が短いから
理由は地形にあります。東京都水道局の説明はこうです。
欧米のように石灰質の地域を長い時間かけて通ってくる水は硬度が高くなり、日本のように地中での滞留時間や河川延長が短い場合は硬度が低くなる。
水は地中を通るあいだに、まわりの岩からカルシウムやマグネシウムを溶かし込みます。だから地下を長く旅した水ほどミネラルが増える。日本の川は短く急なので、山に降った雨が海に出るまでの時間が短い。溶かし込む暇がないまま蛇口に届いている、ということです。
国内でも、蛇口によって3倍以上違う
日本が全体として軟水でも、土地ごとの差は小さくありません。同じ都県の中ですら一様ではないことが、東京都水道局の測定で分かります。令和5年度に都内の給水栓で測った結果は、最高値が北区と中央区の87.6mg/L、最低値があきる野市の25.3mg/L。都内だけで3倍以上違います。都全体の平均は60mg/L程度です。
665地点の調査のほうでも、都道府県ごとの平均は出ています。高いほうから千葉83.4mg/L、埼玉82.8mg/L、熊本72.2mg/L、沖縄68.1mg/L、東京65.8mg/L。最も低かったのは広島の23.5mg/Lでした。関東の値が高いのは、利根川が主な水源になっているためだと調査は説明しています。
ただしこの都道府県別の値は、その県の水を代表するものとしては読めません。調査自体が「採水地点の数が少なく、分布も一様ではない」と断ったうえで、これらの値を県や地域全体の特徴とみなさないよう読者に注意を促しています。実際、最小値は那覇空港の0.101mg/L、最大値は埼玉・上里サービスエリアの200mg/L。同じ沖縄県の中に、県平均68.1mg/Lと0.101mg/Lの地点が同居しています。
抽出そのものが、水に溶けたミネラルで動いている
ここまでは水の話ですが、コーヒーとどう関係するのか。
2014年の研究は、コーヒーの成分が湯に溶け出す過程を水に溶けたミネラルに依存する反応として説明しています。水の中のナトリウム、マグネシウム、カルシウムがコーヒーの分子と結びつくことで、抽出の速さと、出てくる成分の顔ぶれが変わるという内容です。
つまり水は、成分を運ぶ入れ物ではありません。何がどれだけ出るかを決める側に回っています。硬度が違えば、同じ豆・同じ湯温・同じ時間でも、カップの中身が変わります。
「どの硬度がいちばんおいしいか」は好みと淹れ方によるので、ここでは決めません。押さえておきたいのは、水が変数のひとつだと知っておくことです。旅先で味が違ったとき、豆のせいでも腕のせいでもないことがあります。
試すなら、水を1つだけ入れ替える
味の違いを確かめたいときは、比べ方を1つに絞ります。
- 豆・挽き方・湯温・時間はそのままにして、水だけ替える
- 水道水と、硬度表示のあるミネラルウォーターで淹れ比べる
- ボトルの硬度の数値をラベルで確認してから買う(商品ごとに幅があります)
変数を1つにすれば、違いが水由来だとはっきりします。同じ豆でここまで変わるのかと分かると、旅先の一杯の味も読めるようになります。
よくある質問(FAQ)
Q. 日本の水道水の硬度はどれくらいですか?
全国665地点を調べた2021年の研究では、平均48.9mg/L、中央値46.0mg/Lでした。法令の基準は300mg/L以下、おいしさの面からの目標値は10〜100mg/Lです。
Q. 日本の水はなぜ軟水なのですか?
水が地中にとどまる時間と川の長さが短いためです。東京都水道局は、欧米のように石灰質の地域を長い時間かけて通る水は硬度が高くなり、日本のように滞留時間や河川延長が短いと硬度が低くなると説明しています。
Q. 東京の水道水の硬度は高いのですか?
都全体の平均は60mg/L程度で、日本の平均よりやや高い水準です。令和5年度の測定では最高が北区・中央区の87.6mg/L、最低があきる野市の25.3mg/Lでした。
Q. 硬水と軟水で、コーヒーの味はどう変わりますか?
水に溶けたナトリウム・マグネシウム・カルシウムがコーヒーの成分と結びついて抽出されるため、抽出の速さと出てくる成分の構成が変わります。どちらがおいしいかは好みと淹れ方によります。
Q. 引っ越したら同じ豆の味が変わりました。気のせいですか?
水道水の硬度は地域で差があります。東京都水道局が都内の給水栓で測った結果でも、最高87.6mg/Lと最低25.3mg/Lで3倍以上の開きがありました。土地が変われば味が変わることは十分あります。
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まとめ
日本の水道水の硬度は、全国665地点の実測で平均48.9mg/L。同じ方法で測ったドイツ187mg/L、フランス178mg/Lの4分の1ほどです。水が地中にとどまる時間と川の長さが短いので、ミネラルを溶かし込む前に蛇口へ届きます。国内も一様ではなく、東京都内の給水栓だけで87.6mg/Lから25.3mg/Lまで3倍以上の幅があります。コーヒーの抽出は水に溶けたミネラルに依存する反応なので、水が変われば同じ豆でも出てくるものが変わる。旅先で味が違って感じたときは、豆でも腕でもなく、蛇口の向こう側が違っていたのかもしれません。
参考サイト
- https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8242065/ | Hori et al. "Comparison of hardness of tap water in Japan and overseas" Scientific Reports 11:13546(2021年/日本665地点の実測、平均48.9±25.8mg/L・中央値46.0mg/L、国別比較)
- https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/topic/02 | 東京都水道局「水の硬度」(令和5年度の蛇口での試験結果、水質基準300mg/L・おいしさの目標値10〜100mg/L、硬度が地域で違う理由)
- https://researchportal.bath.ac.uk/en/publications/the-role-of-dissolved-cations-in-coffee-extraction | Hendon et al. "The Role of Dissolved Cations in Coffee Extraction" Journal of Agricultural and Food Chemistry 62(21)(2014年/抽出が水中のNa・Mg・Caに依存すること)
