秋の乾燥は10月に始まる|湿度はまだ71%あるのに、空気中の水蒸気は9月から3割減っている

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10月に入ると、唇や喉、手の甲が急に乾いてきます。ところが天気予報の湿度を見ると71%。夏の75%とほとんど変わりません。数字の上では、そんなに乾いていないはずなのに。
この食い違いには理由があります。ニュースで言う湿度は割合であって、空気に入っている水蒸気の量ではないからです。量のほうを見ると、東京では9月から10月にかけて31.6%も減っています。
湿度は「入っている量」ではなく「満杯に対する割合」
まず、天気予報の湿度が何を表しているかを確かめます。これは正しくは相対湿度といって、次のように決まります。
相対湿度 = いま入っている水蒸気の量 ÷ その気温で入る最大量 × 100
大事なのは分母です。空気が抱えられる水蒸気の最大量は、気温によって変わります。暖かい空気はたくさん抱えられ、冷たい空気は少ししか抱えられません。
つまり相対湿度は、コップにどれだけ水が入っているかではなく、そのコップの何割まで入っているかを表しています。コップ自体が小さくなれば、水が減っても割合は保たれます。秋に起きているのは、まさにこれです。
東京の平年値を並べると、はっきり分かれる
気象庁が公表している東京の平年値(1991〜2020年の30年間)を見ます。水蒸気の実際の量は蒸気圧という値で示されていて、単位はhPa(ヘクトパスカル)。数字が大きいほど、空気に水蒸気が多く入っています。
| 月 | 平均気温 | 蒸気圧(水蒸気の量) | 相対湿度 |
|---|---|---|---|
| 8月 | 26.9℃ | 26.2hPa | 74% |
| 9月 | 23.3℃ | 21.5hPa | 75% |
| 10月 | 18.0℃ | 14.7hPa | 71% |
| 11月 | 12.5℃ | 9.6hPa | 64% |
| 12月 | 7.7℃ | 5.9hPa | 56% |
| 1月 | 5.4℃ | 4.5hPa | 51% |
右の2列を比べてください。9月から10月にかけて、
- 相対湿度は75% → 71%。4ポイントしか下がりません
- 蒸気圧は21.5hPa → 14.7hPa。31.6%減ります
気温が23.3℃から18.0℃へ5.3℃下がったので、分母にあたる「入る最大量」も一緒に縮みました。その結果、割合はほぼ据え置きのまま、中身だけが3割減ったわけです。
11月には9月の半分以下になる
先の表をもう少し先まで読むと、減り方の加速が見えます。9月の21.5hPaを基準にすると、
- 10月 14.7hPa(31.6%減)
- 11月 9.6hPa(55.3%減)
- 12月 5.9hPa(72.6%減)
- 1月 4.5hPa(79.1%減。9月のおよそ5分の1)
相対湿度のほうは75→71→64→56→51と、なだらかに下がるだけです。この見え方の差が、「湿度はそれほど低くないのに、なぜか乾く」という感覚のもとになっています。
肌や喉から水分が奪われるのは、まわりの空気がどれだけ水蒸気を受け取れる状態にあるかで決まります。10月は、数字が示すよりずっと乾いた季節の入口だと考えたほうが実感に合います。
暖房を入れると、室内はさらに乾く
同じ理屈で説明できることが、もうひとつあります。暖房を入れた部屋がカラカラになる現象です。
暖房は空気を温めますが、水蒸気を足してはくれません。中身はそのままで、コップだけが大きくなる状態です。分母が増えて分子が変わらないので、相対湿度は下がります。
外気5℃・湿度50%の空気を室内で20℃まで温めると、水蒸気の量は1滴も変わらないのに、相対湿度は19%ほどまで落ちます。暖房が水分を吸っているのではなく、温めた時点で割合が下がっているということです。
だから加湿は、暖房と同時に始めるのが理にかなっています。気温が上がった分だけ、水蒸気を足して釣り合いを戻す作業だからです。
なお気象庁は、湿度の予報を出していません。湿度は場所による偏りが大きく、同じ地点でも家の中と外で違い、草地や池、風向きでも変わるためです。そのかわり湿度の低い状態が続くと予想されるときには乾燥注意報を発表します。日々の数値を追うより、注意報が出たかどうかを目印にするほうが実用的です。
10月のうちにやっておくと楽なこと
- 湿度の数字だけで判断しない 同じ70%でも、夏と秋では空気に入っている水蒸気の量がまるで違います
- 加湿の準備は暖房より先に 暖房を入れた瞬間から相対湿度は落ちます。フィルターの掃除や給水の段取りは、寒くなる前のほうが楽です
- 乾燥は気温で予測する 気温が下がった日は、湿度の表示にかかわらず空気の水蒸気は減っています
よくある質問(FAQ)
Q. 秋の乾燥はいつから始まりますか?
東京の平年値では、空気中の水蒸気の量(蒸気圧)が9月の21.5hPaから10月には14.7hPaへ31.6%減ります。相対湿度の下がり方はゆるやかですが、実質的な乾燥は10月から始まっています。
Q. 湿度が70%もあるのに乾くのはなぜですか?
天気予報の湿度は相対湿度で、その気温で入る最大量に対する割合だからです。気温が下がると最大量も減るため、割合が保たれたまま実際の水蒸気量だけが減ります。
Q. 暖房をつけると乾燥するのはなぜですか?
暖房は空気を温めますが水蒸気を足しません。温めると「入る最大量」が増えるので、中身が同じでも相対湿度は下がります。暖房が水分を奪っているわけではありません。
Q. いちばん乾燥するのはいつですか?
東京の平年値では1月です。蒸気圧は4.5hPaで9月のおよそ5分の1、相対湿度も51%まで下がります。量と割合の両方が最も低くなる月です。
Q. 加湿はいつから始めればいいですか?
暖房を使い始めるタイミングが目安です。温めた時点で相対湿度が下がるので、暖房と加湿はセットで考えると釣り合いが取れます。
そろそろ準備しておきたい方は、加湿器をYahoo!ショッピングで探せます。
まとめ
天気予報の湿度は、空気に入っている水蒸気の量ではなく、その気温で入る最大量に対する割合です。気温が下がれば分母も縮むので、割合はあまり動きません。東京の平年値では、9月から10月にかけて相対湿度は75%から71%へ4ポイント下がるだけですが、水蒸気の量は21.5hPaから14.7hPaへ31.6%減ります。11月には9月の半分以下、1月にはおよそ5分の1です。暖房で部屋が乾くのも同じ理屈で、温めた分だけ割合が下がっているだけ。10月に肌や喉が乾き始めるのは気のせいではなく、数字の見え方のほうが実態に追いついていないのでした。
参考サイト
- https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=44&block_no=47662 | 気象庁「過去の気象データ検索/平年値(年・月ごとの値)東京」(1991〜2020年の30年平年値。気温・蒸気圧・相対湿度の月別値)
- https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq5.html | 気象庁「よくある質問 湿度・気圧・日照時間について」(湿度の予報をしない理由と乾燥注意報)
