ハロウィンのランタンは、もとはカブだった|アイルランド国立博物館に残る「ゴースト・ターニップ」

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10月に入ると、店先にオレンジ色のカボチャが並びます。目と鼻と口をくり抜いた、あのジャック・オー・ランタン。ハロウィンといえばカボチャ、というくらい結びついています。
ところが発祥の地アイルランドでは、くり抜いていたのはカボチャではなくカブでした。アイルランド国立博物館には、1900年ごろに作られていた型のカブのランタンが「ゴースト・ターニップ(幽霊カブ)」として収蔵されています。
1943年、学校の先生が博物館に持ち込んだ
アイルランド国立博物館の民俗コレクションに、収蔵番号F1943.350のカブのランタンがあります。
1943年、ドニゴール州フィントン近郊で教えていた教師ロシュ・ニ・ブラナーン(Rois Ní Braonáin)が博物館に持ち込んだものです。彼女は「その土地で1900年ごろにいつも作られていた型だ」と説明しています。
ひとつ補足しておくと、このカブには石膏で作られた複製のモデルがあります。館の美術家アイリーン・バーンズ(Eileen Barnes)が制作し、彩色したものです。博物館のページは展示状況を「On Display」と記していますが、実物と複製のどちらが並んでいるかまでは書いていません。
使い方は単純で、カブの中にろうそくを立て、10月31日の夜に人を驚かせるために持ち歩きました。
ジャックは、天国にも地獄にも入れてもらえなかった
ジャック・オー・ランタンという名前は、アイルランドの民話から来ています。
けちなジャックという男が、悪魔をだまして自分の得にしました。ところが死んだとき、神は彼を天国に入れず、悪魔も地獄に入れてくれませんでした。行き場をなくしたジャックは、手元を照らすランタンひとつを持って、永遠に地上をさまようことになります。
アイルランドの人々は、このさまよう魂を遠ざけるために、カブに恐ろしい顔を彫りました。怖い顔で追い払う、という考え方です。もっとも博物館の記録のほうは、このカブを「人を驚かせるために」持ち歩いたと書いています。魂よけとして始まった道具が、やがて人を驚かす遊びにもなった、ということのようです。
10月31日なのは、11月1日が1年の境目だったから
そもそもなぜ10月31日の夜なのか。もとをたどるとケルトの祭りサウィン(Samhain)に行き着きます。
サウィンは11月1日。夏の終わりであり冬の初日であり、1年の始まりでもありました。ただし多くの伝統行事がそうであるように、盛り上がるのは前日の夜のほうです。アイルランド語でOíche Shamhna(イーハ・ハウナ)と呼ばれるこの晩は、いまもアイルランド各地で祝われています。
8世紀になって、ローマ・カトリック教会が諸聖人の日(All Saints' Day)を11月1日に移しました。その前夜が All Hallows' Eve、つまりハロウィンです。Hallowe'en という綴りは「The Hallowed Ones(聖なる者たち)の祝日の前夜」に由来します。
キリスト教の祝日とケルトの祭りが同じ日に重なり、古い習わしがそのまま残ったわけです。
仮装も、家々を訪ねるのも、この夜の習わし
サウィンの晩には、死者の魂が家に帰ってくると考えられていました。ハロウィンは「ゴースト・ナイト」「スピリット・ナイト」とも呼ばれます。悪い霊も動き回るとされたため、人々はこの夜にひとりで出歩くのを避けました。
そこから、いまも残る習わしがいくつも生まれています。
- 幽霊の面 近所の人を驚かせるために作られました
- 家々を訪ね歩く 変装で誰だか分からなくなった大人や子どもが、連れ立って訪問し、芸を見せて回りました
- 果物とナッツ 収穫したものが祝宴の料理になり、子どもの遊びにも使われました
- 結婚占い 誰と結ばれるかを占う遊びも行われました
- 戸口の十字 特別な十字を作って扉の上に掲げ、1年の厄を防ぎました
変装で誰だか分からなくなった人たちが、連れ立って家々を訪ね、芸を見せて回る。いまのトリック・オア・トリートと重なる形が、この晩の習わしのなかにあります。
カボチャに替わったのは、アメリカに渡ってから
ではカボチャはどこから来たのか。アイルランド国立博物館の説明は明快で、「いま広く使われているカボチャは、このアイルランドの伝統がアメリカで発展したもの」と書かれています。
ブリタニカによれば、アイルランド移民がアメリカに渡ったあと、その土地が原産のカボチャで彫るようになりました。手に入る材料が替わっただけで、やっていることは変わりません。
カブは硬くて小さく、カボチャは柔らかくて大きい。彫りやすさで言えば、置き換わった理由も想像はつきます。ただし博物館もブリタニカも、そこまでは書いていません。確かなのは、カブが先で、カボチャが後だったということです。
よくある質問(FAQ)
Q. ハロウィンのランタンは、もともと何で作られていたのですか?
アイルランドではカブです。アイルランド国立博物館には、1900年ごろの型を伝える「ゴースト・ターニップ」が収蔵されています(収蔵番号F1943.350)。
Q. なぜカボチャになったのですか?
アイルランド移民がアメリカに渡り、その土地にあったカボチャで彫るようになったためです。アイルランド国立博物館は「いまのカボチャは、このアイルランドの伝統がアメリカで発展したもの」と説明しています。
Q. ジャック・オー・ランタンのジャックとは誰ですか?
アイルランドの民話に出てくる男です。悪魔をだましたために、死後は天国にも地獄にも入れてもらえず、ランタンひとつを持って地上をさまよい続けることになりました。
Q. なぜ10月31日なのですか?
ケルトの祭りサウィンが11月1日で、その前夜にあたるためです。8世紀に諸聖人の日が11月1日に移されたことで、前夜のAll Hallows' Eve=ハロウィンという形に定まりました。
Q. 仮装はいつから始まったのですか?
サウィンの晩に死者の魂や悪霊が動き回るとされ、幽霊の面を作って近所を驚かせる習わしがありました。変装した人々が連れ立って家々を訪ね、芸を見せて回る風習もあります。いまのトリック・オア・トリートと重なる形です。
Q. サウィンとはどういう祭りですか?
古代のブリテンとアイルランドで祝われたケルトの祭りで、11月1日にあたります。夏の終わりであり冬の初日、そして1年の始まりとされていました。
今年の飾りつけをこれから考えるなら、ハロウィンの飾りはYahoo!ショッピングで探せます。カブで作るのは、さすがに骨が折れそうですが。
まとめ
ハロウィンのランタンは、アイルランドではカブで作られていました。アイルランド国立博物館には1943年に教師から寄せられた「ゴースト・ターニップ」があり、1900年ごろにその土地で作られていた型を伝えています(館の美術家による石膏の複製モデルも作られました)。中にろうそくを立てて、10月31日の夜に人を驚かせるための道具でした。名前の由来は、天国にも地獄にも入れず地上をさまようジャックの民話。10月31日という日付は、ケルトの祭りサウィン(11月1日)の前夜にあたるからです。オレンジ色のカボチャになったのは、アイルランド移民がアメリカに渡ってから。材料は替わりましたが、怖い顔を彫って灯りをともす、という中身は1世紀以上変わっていません。
参考サイト
- https://www.museum.ie/en-IE/Collections-Research/Collection/Top-things-to-see-in-the-Irish-Folklife-Collection/Artefact/Ghost-turnip/b202e8ea-0728-4b3d-b0f1-82660fe45ce9 | National Museum of Ireland「Ghost turnip」(収蔵番号F1943.350・1943年寄贈・Rois Ní Braonáin・石膏複製の制作者Eileen Barnes)
- https://www.museum.ie/en-IE/Collections-Research/Folklife-Collections/Folklife-Collections-List-(1)/Religion-and-Calendar-Customs/Hallowe-en-Samhain | National Museum of Ireland「Traditions and customs of Halloween / Samhain」(サウィンの日付・Oíche Shamhna・仮装と訪問の習わし)
- https://www.britannica.com/story/why-do-we-carve-pumpkins-at-halloween | Britannica「Why Do We Carve Pumpkins at Halloween?」(ジャックの民話・カブからカボチャへ・8世紀の諸聖人の日)
