カフェだと作業がはかどるのはなぜ?|音は小さすぎても大きすぎてもだめ、発想の課題は70デシベルのざわめきで成績がいちばんよかった

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家の机ではなかなか手が動かないのに、カフェに行くと企画書の続きがすっと書ける。そんな経験はないでしょうか。静かな部屋のほうがはかどりそうなものですが、実感は逆だという人は少なくありません。
この感覚に近い結果を、発想の課題で出した研究があります。2012年に学術誌 Journal of Consumer Research に載った、ラヴィ・メータ氏らの論文です。音の大きさを50デシベル、70デシベル、85デシベルの3段階に変えて比べたところ、70デシベルのほどよい雑音のほうが、50デシベル(ふだんの話し声くらい)より発想の課題の成績がよくなりました。ただし85デシベルまで大きくすると、発想の力は逆に落ちました。音は小さすぎても大きすぎてもいけない、というのが結論です。
音の大きさを3段階に変えた実験
論文は5つの実験をまとめたものです。論文の要旨は結果をこう書いています。「中程度(70dB)の環境音は、低い(50dB)環境音に比べて、創造的な課題の成績を高め、革新的な商品を買いたいという気持ちも高めた。一方、高い(85dB)雑音は創造性を損なった」。
数字だけでは音の大きさが想像しにくいので、目安を並べておきます。70デシベルと85デシベルは、メータ氏が当時所属していたイリノイ大学の発表にあるたとえです。50デシベルは、東京都環境局の「日常生活音のいろいろ」の表から近いものを選びました。
| 音の大きさ | 目安 | 発想の課題 |
|---|---|---|
| 50デシベル | ふだんの話し声(約50〜61デシベル)の小さいほう | 70デシベルより低い |
| 70デシベル | 高速道路を走る乗用車の音 | いちばん高い |
| 85デシベル | 幹線道路の交通騒音 | 損なわれる |
この目安は、あくまで音量のイメージをつかむためのものです。実験で流した音がこれらの音だったわけではありません。また、この研究は実際のカフェの音量を測ったものでもありません。比べたのは音の大きさで、「カフェのざわめきは70デシベル前後だから効く」と言えるわけではない点には注意してください。
メータ氏は結果を、イリノイ大学の発表の中でこう説明しています。「私たちが見つけたのは、雑音の大きさと創造性のあいだに『逆U字』の関係があるということです」。音が小さい側から大きくしていくと、発想の力はいったん上がり、ある点を過ぎると下がっていく、という形です。
少しうるさいと、頭が「大づかみ」に切り替わる
なぜ、ほどよい雑音で発想がよくなるのでしょうか。論文は、音が頭の中の処理にどう影響するかも測っています。要旨の説明は3段階になっています。
1. ほどよい雑音は、考えごとを少しやりにくくする。論文はこれを「処理のしにくさ」と呼んでいます。静かな部屋ならすらすら追える考えも、周りに音があると少し引っかかりながら追うことになる、というイメージです。
2. やりにくくなると、頭は細部から一歩引いて、物事を抽象的に捉えるようになる。細かい点を一つずつ積み上げるより、全体を大づかみにする考え方のほうへ切り替わる、ということです。
3. 抽象的に捉えるほうが、発想の課題ではよい結果につながる。要旨は、この流れで創造性が高まったと書いています。
イリノイ大学の発表によると、研究チームは、音が大きくなるほど気が散る度合いも大きくなることを示しました。メータ氏はそのうえで「気が散る度合いが高まると、枠にとらわれない考え方になる。私たちが抽象的な思考と呼ぶもので、創造性が高まったときの特徴です」と話しています。
つまり、雑音で集中力が上がったわけではありません。少し気が散ることで考え方のモードが変わり、そのモードが発想に向いていた、という説明です。
うるさすぎると、考えること自体ができなくなる
85デシベルで成績が落ちた理由について、論文の説明は70デシベルのときと別の話になっています。要旨によると、大きすぎる雑音は「情報を処理する度合いを下げてしまい、創造性を損なう」。考え方のモードが変わる前に、考える作業そのものが妨げられるということです。
メータ氏も発表の中で、中程度を超えると「気が散る度合いがあまりに大きくなり、思考のプロセスに影響し始める」と話しています。ほどよい引っかかりが、ただの邪魔に変わる境目があるわけです。
カフェで作業するときに生かすなら
研究から言えることと、言えないことを分けておきます。
- 効果が確かめられたのは「発想」の課題 企画を考える、アイデアを出す、文章の構成を練る、といった作業がこれに近いものです。メールの返信や数字の確認のように、正確さが求められる作業でも同じことが起きるかは、この研究からは分かりません
- 静かなら静かなほどよい、とは限らない 家で手が止まるときは、場所を変えるか、音のある環境に移ってみる価値があります
- うるさすぎる席は避ける 85デシベルでは成績が落ちています。大人数の席のそばや、音楽の大きな店が落ち着かないと感じるなら、その感覚は研究の結果とも合っています
午後の遅い時間にカフェで作業するなら、コーヒーを頼む時間にも気をつけたいところです。カフェインが眠りに響く時間についてはカフェインは寝る9時間前でも眠りに響くで詳しく書いています。
カフェの席を予約しておきたい日は、一休.comレストランのカフェ一覧(広告)から探すこともできます。
よくある質問(FAQ)
Q. 少しうるさい場所のほうが、作業ははかどるのですか?
発想の課題については、成績が上がったという結果が出ています。メータ氏らの2012年の研究では、70デシベルの環境音のほうが50デシベルより創造的な課題の成績が高くなりました。研究の説明では、少し気が散ることで考え方が大づかみになり、それが発想に向いていました。集中力が上がったから、という話ではありません。正確さが求められる作業でも同じことが起きるかは、分かっていません。
Q. うるさすぎるカフェは逆効果ですか?
同じ研究で、85デシベルまで大きくすると創造性は損なわれました。大きすぎる雑音は、考える作業そのものを妨げると説明されています。ただし、どのカフェが何デシベルかはこの研究では測られていません。
Q. なぜ、ほどよい雑音で発想がよくなるのですか?
論文によると、ほどよい雑音は考えごとを少しやりにくくします。すると頭は細部から一歩引いて物事を抽象的に捉えるようになり、それが発想の課題でよい結果につながりました。
Q. 70デシベルはどのくらいの音ですか?
研究者の所属大学の発表では、高速道路を走る乗用車くらいの音とたとえられています。85デシベルは幹線道路の交通騒音くらいです。どちらも音量のイメージで、実験で流した音そのものではありません。
Q. 事務作業や勉強にも効きますか?
この研究が調べたのは発想の課題です。正確さが求められる作業や暗記について、同じ効果があるかは分かっていません。
まとめ
カフェで作業がはかどる感覚に近い結果が、発想の課題で出ています。メータ氏らの2012年の研究では、70デシベルのほどよい雑音のほうが、50デシベル(ふだんの話し声くらい)より発想の課題の成績がよくなりました。ほどよい雑音は考えごとを少しやりにくくし、そのぶん頭が物事を大づかみに捉えるほうへ切り替わるからだと説明されています。ただし85デシベルまで大きくなると、考える作業そのものが妨げられて成績は落ちました。音は小さすぎても大きすぎてもいけません。アイデアを出したい日は、ほどよいざわめきのある席を選んでみてください。
参考サイト
- https://academic.oup.com/jcr/article-abstract/39/4/784/1798283 | Mehta, Zhu & Cheema (2012) "Is Noise Always Bad? Exploring the Effects of Ambient Noise on Creative Cognition", Journal of Consumer Research 39(4):784-799(Oxford University Press の論文ページ)
- https://experts.illinois.edu/en/publications/is-noise-always-bad-exploring-the-effects-of-ambient-noise-on-cre/ | イリノイ大学 研究者データベース(同論文の要旨:5つの実験、50・70・85デシベル、処理のしにくさと抽象的な処理)
- https://news.illinois.edu/research-too-much-too-little-noise-turns-off-consumers-creativity/ | イリノイ大学 News Bureau(メータ氏のコメント、気が散る度合いと抽象的な思考、70・85デシベルのたとえ)
- https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/noise/noise_vibration/daily_life_noises | 東京都環境局「生活騒音」(日常生活音のいろいろ)
