フクロウの首はなぜ270度回っても平気?|首の血管を守る4つのしくみ

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フクロウカフェで、こちらを向いていたフクロウが、体はそのままで顔だけくるりと真後ろへ向ける。初めて見ると、首が痛くないのか心配になる動きです。フクロウの首は、左右それぞれ最大270度まで回ります。
人が同じように首をひねれば、ただでは済みません。それなのにフクロウが平気なのは、首の骨と血管に、人にはない仕掛けがあるからです。この記事では、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学医学部のチームが2013年に発表した調査をもとに、そのしくみを紹介します。
フクロウは、目を動かせない
そもそも、なぜフクロウはそこまで首を回すのでしょうか。手がかりは目にあります。札幌市円山動物園は、エゾフクロウの紹介で次のように書いています。
眼球については眼窩(がんか)に固定されているので動かすことは出来ない。
人は、顔を動かさなくても目だけで横を見られます。フクロウにはそれができません。目が頭の前面に並び、その目を動かせないので、横や後ろを見たいときは頭ごと向けることになります。円山動物園は同じページで、フクロウの頭は真後ろを向いたり上下を逆さにしたりと、自由に動かせるとも書いています。
人が首を急にひねると、なぜ危ないのか
首には、脳へ血液を送る血管が通っています。ジョンズ・ホプキンス大学の発表によると、人の頭や首が急にねじられると、血管の内側の壁が引き伸ばされて傷つき、そこにできた血のかたまり(血栓)がはがれて流れ、命にかかわる塞栓症や脳卒中を起こすことがあります。よくあるのは車の事故による「むち打ち」で、激しく揺れるジェットコースターでも起きることがあるそうです。
フクロウは、それよりはるかに大きく首を回しても、血管を傷つけず、脳への血液も途切れません。研究チームが知りたかったのは、その理由でした。
ジョンズ・ホプキンス大学が見つけた4つのしくみ
研究チームは、自然に死んだシロフクロウ、アメリカフクロウ、アメリカワシミミズクの3種、およそ12羽を調べました。血管に造影剤を入れてX線やCTで撮影し、解剖して細かく描き起こしています。さらに首を手で回し、血管がどうなるかを確かめました。見つかったのは、次の4つのしくみです。
1. 血管の通り道が、血管の10倍の太さ
首の骨(頸椎)には、脳へ向かう血管の1つ(椎骨動脈)が通る穴があいています。フクロウでは、この穴の直径が、中を通る血管のおよそ10倍もありました。すき間がクッションになり、首をねじっても血管が穴の中で動けるようになっています。調べたフクロウの頸椎14個のうち、12個にこの形が見られました。ちなみに人の頸椎は、日本整形外科学会によると7個です。
2. 血管が首に入る位置が高い
フクロウの椎骨動脈は、ほかの鳥よりも高い位置で首の骨の中に入っていました。入り口は、14番目ではなく12番目の頸椎です。そのぶん血管の周りにゆとりができ、たるみを持たせられるので、首を回しても血管が張りつめにくくなります。
3. 血管どうしをつなぐ「抜け道」がある
首を大きく回すと、ねじれた側の血管が押されて血が流れにくくなることがあります。フクロウには、脳へ向かう太い血管どうしをつなぐ細い血管があり、片方の道がふさがっても、もう片方から血液を回せるようになっていました。
4. あごの下に、血液をためる袋がある
調査でいちばん目を引いた発見は、血管に造影剤を入れ、血の流れをまねた状態で首を回したときに見つかりました。頭の付け根、あごの骨のすぐ下で、血管がどんどんふくらみ、血液をためる袋のようになったのです。フクロウは大きな脳と目を持ち、そこには多くの血液が要ります。首を回しているあいだも、ここにためた血液でそれをまかなえると研究チームは考えています。人の動脈は、ふつうは枝分かれするほど細くなっていき、こんなふうにふくらむことはありません。
研究チームの一人で、脳や脊髄の血管を専門とする放射線科医のフィリップ・ガイユー医師は、「人の頭を極端にひねるのは、本当に危ない。フクロウに見られる血管を守るしくみの多くを、人は持っていないからだ」と話しています。
この調査は、Science誌の図解コンテストで1位になった
この調査結果は、論文ではなく、1枚の図解ポスターとしてまとめられました。全米科学財団(NSF)とScience誌が主催する「2012年 国際科学・工学ビジュアライゼーション・チャレンジ」で、ポスター・グラフィックス部門の1位に選ばれ、科学誌Scienceの2013年2月1日号に掲載されています。
ただし、調べたのは死んだフクロウの骨と血管の形です。生きているフクロウの首を回しながら血の流れを測ったわけではありません。「4つのしくみがあるから平気なのだろう」というのは、形から読み取った説明です。
フクロウカフェで会ったら、首の動きに注目
フクロウカフェや動物園で、フクロウが首を回す姿を見かけたら、目が動かないぶんを首で補っていること、その首の中で血管が守られていることを思い出してみてください。東京で会えるお店は東京のフクロウカフェ完全ガイドで紹介しています。
フクロウの種類による顔つきや体の違いを見比べたくなったら、写真で見る図鑑も出版されています。フクロウの図鑑をYahoo!ショッピングで探す(広告)
よくある質問(FAQ)
Q. フクロウの首は何度まで回りますか?
ジョンズ・ホプキンス大学医学部の発表によると、左右それぞれ最大270度です。真後ろよりさらに90度先まで回ることになります。
Q. なぜフクロウは首を大きく回すのですか?
目を動かせないからです。札幌市円山動物園によると、フクロウの眼球は眼窩に固定されていて動かせません。横や後ろを見るには、頭ごと向ける必要があります。
Q. 首を回しても血管が傷つかないのはなぜですか?
首の骨にある血管の通り道が血管の約10倍の太さでゆとりがあること、血管が首に入る位置が高いこと、血管どうしをつなぐ抜け道があること、あごの下に血液をためる部分があることの4つが見つかっています。
Q. フクロウの首の骨は何個ですか?
ジョンズ・ホプキンス大学が調べたフクロウでは14個でした。人の首の骨は7個なので、2倍あることになります。
まとめ
フクロウが首を左右に270度まで回すのは、目を動かせないぶん、頭ごと向けて周りを見るためです。人なら血管を傷めかねない動きですが、フクロウの首には、血管の通り道のゆとり、高い位置から入る血管、血管どうしの抜け道、あごの下で血液をためる袋という4つのしくみがありました。次にフクロウが振り向く姿を見たら、首の中で働いているしくみにも思いをはせてみてください。
参考サイト
- https://www.sciencedaily.com/releases/2013/01/130131144102.htm | ScienceDaily「Owl mystery unraveled: Scientists discover how bird can rotate its head without cutting off blood supply」(出典:Johns Hopkins Medicine、2013年1月31日のプレスリリース)
- https://www.aaas.org/news/science-2012-international-science-and-engineering-visualization-challenge-winners-announced | AAAS「Science 2012 International Science and Engineering Visualization Challenge Winners Announced」
- https://www.city.sapporo.jp/zoo/098-k.html | 札幌市円山動物園「エゾフクロウ」
- https://www.joa.or.jp/public/sick/body/cervix.html | 日本整形外科学会「頚椎(くび)の症状一覧」
